楢崎正剛のワールドカップ
友人に教わった、越本隆志というボクサーの番組をNHKで見ました。
35歳で初めて世界タイトルを取り、その後、友人曰く全盛期には負ける筈も無いような相手にTKO負けを喫し、そのまま引退したボクサーの戦いと、その選手人生の終焉を描いた1時間弱の番組でした。

彼はラストインタビューで、これからの事、これからの夢は語れない、と言い、同時に、
『今後は初心に返って、誇りを持って生きたい』
とだけ、語りました。

終焉を迎えるその時に、そんな言葉を吐ける彼は、全てをボクシングに掛け、真の意味で戦って来たのか、そんな潔くも雄々しい言葉を聞けて、番組を見てよかった、と思いました。

スポーツが好きで、見るのもやるのも好きで、好きになった競技やそのチームや選手を応援して、勝敗どちらもで様々な感動、怒り、悲しみ、喜びを与えられている日々な訳ですが、光と影が有る様に、いつか来る終焉までも、今までの気持ちを感謝すると共に共有し味わう事が出来たら、と思います。
その日は考えても考えても、先で有れば先で有る方がいいとは思いますが、心の中で、声に出して応援し、また沢山の感動を与えて貰う事が出来るその時間は、限りが有るからこそ、熾烈にもなるし、感涙に咽びもするし、また面白く楽しい物だとも思います。

ワールドカップは、各国のスーパープレイを見る事が出来、体感もし、歴史をも味わい、旅行としては感動的なものでしたが、日本代表に関しては本当に楽しいと言う物だけでは有りませんでした。

知人友人はみんな御存知だと思うのですが、自分が一番応援している選手は、他の誰でもなく楢崎正剛で、日本一の技術と才能を持っていながらも、怪我に見舞われ、またチャンスを与えられず、どう見ても順当ではない使われ方で、ワールドカップでは正ゴールキーパーの座を明渡す事になってしまいました。
 あるいは、クリンスマン監督のドイツ代表の様に、決して賛同の声だけではない方法とは知ってはいますが、決戦までの毎試合で楢崎ともう一人を交互に使って試していたならば、安定も判断力も、守備範囲も高さも上回る楢崎が、正ゴールキーパーになっていたのは間違いありません。

3試合も、また違った結果になっていた、と私は今でも信じています。

決戦前の試合、数試合でジーコ監督にはこれ以上のサプライズは無く、ずっとキーパーを変えないであろうと噂が流れていた時も、信じ続けてはいたのですが、流石にマルタ戦、ドイツ戦ではよっぽどな事が起きない限りは、楢崎の出場は無いという結果になり、非常に自分のモチベーションを保つのは辛い日々が続きました。

日本代表もJリーグも、サッカーも大好きですが、自分が一番応援していて、しかも日本一の実力者が順当に出る事が出来ない現実を正視できなかったのです。

友人が、彼も誰も信じていないかもしれない、信じているかもしれない出場を、若しくは出場出来ない姿をその目で焼き付けてくる、共有するのが応援するという事、と、今までそういった方向に考える事の出来なかった言葉を、伝えてくれました。

光があるから影も有り、影も見つめたからこそ、その後の光はより明るく輝く。

それを信じてドイツに乗り込みました。



ドイツでの日本代表の観戦は、日本戦3試合と、ボンでの練習を観戦しました。

私が見てきたドイツでの楢崎正剛は、本物の代表選手でした。

誰よりも多く練習をし、誰よりも完璧なコンディションを保ち(キーパーというポジションが、有事の際には準備もほぼ無しに交代を余儀なくされる可能性があるからかと思いますが)本気で戦う姿を見る事が出来ました。

試合本戦の際には、試合前、ハーフタイムと、徹底的にボール感を忘れる事無きようゴールマウスに立ち、シュート練習を止めて体を作り、常にスタメンで出ている選手に声を掛け労い応援をする姿を見る事が出来ました。
どちらも真剣その物でした。
 練習の際には、誰よりも明るく振舞い、別ポジションの選手とも仲良く、声を掛け合い、他のどの選手よりもいい雰囲気を作っていました。

彼はどんな場面で出場を宣言されていたとしても、最高の仕事が出来たに違いありません。
その体勢を完璧に作り、いい雰囲気を造り上げ周囲を和ませ、悲しみの淵にあるブラジル戦でも、誰よりも皆に声を掛け、正ゴールキーパーにも労いの言葉を最初に掛けに行くその姿勢、その気持ち、その心、全てに感動しました。

私が見たものは、紛れも無く楢崎正剛のワールドカップ、楢崎正剛の戦いに他なりませんでした。
出場は叶わなかったものの、彼もまた23人の一員であり、彼の力は23人には、日本代表の戦いには必要であった、必須だったその様を、生で見る事が出来ました。
どれだけ皆の支えで、どれだけ必要だったかを知る事が出来て幸せでした。
紛れも無く戦っていました。

私が見たかったのは、勿論一番は楢崎正剛がドイツのピッチで試合に赴き、ゴールマウスの前に立つ姿に他なりませんが、彼が戦う、別の方法で戦い抜く姿は、間違いなく見る事が出来たのです。

選手サポはとかく嫌煙されがちだとは思います。
チームを愛さないのか?とも違うのですが、全体を見ていないと思われがちですし、代表サポや、チームサポからしてみれば、楢崎ナラザキうるせーなのかもしれません。
ただ、楢崎サポには変わりありませんが、サッカーをしている楢崎が好きで、サッカーサポであることには変わりない、と思っています。
楢崎を応援することは、楢崎を取り巻く周り、名古屋グランパスを、共に戦う選手たち、関わりが近いDF、勿論点を取ってくるFW、舵を取りゲームメイクをするMF、全てを応援する事、関心を持つ事に繋がります。
チームが決して上り調子ではない時に、野次ったり叱咤激励をする応援の仕方は有りだとは思います。
ただ、選手を応援し、調子が悪いとき、野次り叱咤激励というよりも、そこから這い上がってくる事をただ一心に信じて応援し続ける、信じるのはやはり精神力が居ると思うのです。

友人が、応援する側は応援される側よりもタフじゃないといけない、そう私に教えてくれましたが、正にその一言に尽きます。

だから信じるし、応援する。
その見返りに心に残る一生モノの感動が貰えるなら安いモノです。



楢崎は、カーンやレーマンに比べれば、まだまだ先が有る、とも思えるのですが、決して先が長い、とは言えない年になりました。
いつか来る終焉、その時まで変わらず応援して行きたいし、光も、また影も同時に応援したい、そしていつか来る終焉の時には、心から感謝を言いたいと思っています。
その時まで沢山の感動や勝利を共有できれば、と思っています。
ただその日が来るのは、一日でも遅い方がいいのですが。


戦っている姿を見たい、ただそれだけなのです。
私は彼を応援している、ただの1サポーターです。
それ以上でもそれ以下でもなく、彼からは感動を貰えるだけで充分、いや最高なのです。

数あるスポーツの中で、好きな物は沢山ありますが、その中でもサッカーが好きで、この目が見える限り、沢山の試合を見、心に焼き付けていきたい、いつでもそう思っています。
ワールドカップは、特に今回のドイツワールドカップは、本当に思い出に残る大会となりました。

願わくば、またこんな幸運が訪れますよう、心から祈るばかりです。
【2006.08.25 Friday 02:33】 author : ayu | ワールドカップ | comments (2) | trackbacks (0) |

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